事故当日



じりじりとした思いで定時になるのを待ちました。
嘘であって欲しい。嘘であってほしい。


5時15分。定時。


終業のチャイムと共に、会社を飛び出しました。
一刻も早く状況を知りたい、そんな一心でした。


午後5時半。大阪駅到着。


構内は異様なざわめきで満ちていました。
改札機の前にはただならぬ数の駅員さんが立っています。
駅員さんに説明を求めている人、詰め寄っている人、案内を受けている人・・・。


事故は本当だったんだ・・・。


現実を突きつけられた瞬間でした。

手の先が冷たくなり、呼吸が乱れます。

動揺を押し殺し、なんとか職員さんに話し掛けました。


「事故があったんですか?」


なんとも間抜けな質問。
でもそれが一番に知りたかった。
ネットニュースであれだけ流れていたのだから、
あったには違いないのだけど、
どうしても信じたくなくて、確認したかったのです。


「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」


駅員さんは本当に申し訳なさそうな顔をして、
多分20歳は年下であろう私に頭を下げました。


「いえ・・・そんな・・・・あの・・・」


上手く言葉になりません。
事故が本当にあったのだという衝撃は、私から完全に思考能力を奪っていました。


「いつ頃復旧しそうですか?」
「今のところ復旧の目処は立っておりませんで・・・」


そのとき、隣にいた駅員さんに、おじさんがくってかかりました。


「どういうことだよ!え?!」


こうした光景は、以後、振り替え輸送をおこなった阪急の駅で、
何度も目撃することになるのだけど、
その剣幕に驚き、そして理不尽さを感じずにはいられませんでした。


駅員さんが悪いんじゃない・・・。


くってかかられた駅員さんは頭を下げて謝っています。

「本当に申し訳ありません」

どんな事故なのかはこの時点でまだわからなかったけれど、
でも、駅員さんにくってかかるのは違うと感じていました。

「あの、大変だと思いますけど、がんばってください」


それだけ言い残して、振り替え輸送を行っている阪急梅田駅へ向かいました。


阪急の駅も混乱していました。


「JRとの振替輸送を行っています。
JRの定期・切符をお持ちのお客様はこちらの改札から・・・」


この日、初めて振替輸送用を証明した紙をもらいました。
降りる駅でこれを渡してくださいとのこと。
この日から6月19日の運転再開まで振替輸送は行われることになるのだけど、
証明書が配られたのはこの日だけでした。

まだ、誰にも事故の大きさ、これからのことは分かっていなかったのです。






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