【入学テスト】



学校への入学を決めた私は、レベルチェックテストを受けた。当たり前のことだが、英語力は人それぞれ違う。クラスもレベルに応じて分かれており、レベルチェックテストはクラス分けのためのものであった。

私の希望はもちろん「翻訳コース」である。しかし、学校案内を読んだ時すでに、今の私のレベルでは「翻訳コース」には入れないということが分かっていた。
学校案内の中には、各クラスの紹介と、目安レベルが英検とTOEICで示されていた。私のレベルは英検準1級、TOEIC830点である(2003年5月現在)。このレベルは「英字新聞の社会面なら辞書なしでも記事の80%以上理解できる。Time、Newsweekって誌等でも、A4一枚分程度の記事なら辞書を使って独力で読み切ることができる。また、スピードの速い英語、構文や単語が難しい英語を聞き取ることは難しいが、英検準1級やTOEIC、TOEFLなどで出題されるレベルのインタビュー、スピーチ、ニュースなら1、2回聞いて重要なポイントを把握できる。また、日本語で聞いた内容を英語で第三者に伝えることができる。」と記されていた。
予想していたことであった。書いてあることは全くそのとおりで、まさに今の私の英語力を的確に表現していた。あまりにズバリだったので、驚いた程だ。きっと私と同じくらいの英語力の人が日本にはたくさんいるんだろうなぁとぼんやり思った。その事実を私は特に落胆もせず、感激もせず、淡々と受け止めた。

翻訳を本格的に学ぶまで、まだ私には英語力(基礎力)をつける必要がある・・・。もしかしたら道は少し長くなるかもしれないと思った。その事実に全く怯まなかったと言ったら嘘になる。チェックテストの結果にショックを全く受けなかったとも言えない。無味乾燥な紙切れ1枚に「あなたの訳は日本語として(英語として)分かりにくい文章になっています。」というようなことが書かれているのである。レベル云々より、そのコメントの方にショックを受けた。曲がりなりにもカナダでSTIBC(The Society of Translators and
Interpreters of British Columbia=ブリティッシュコロンビア州翻訳通訳協会)の試験に合格した身である。心のどこかで「もしかしたら」という気持ちがないでもなかった。英語力は確かにまだまだ未熟である。しかし正直日本語力(国語力)には多少の自信があった。それで多少カバーできる部分があるかもしれない、と期待していた。それが粉々に打ち砕かれてしまった。自分の甘さを痛感し、恥じた。英語力、日本語力、そして翻訳家を目指すものとしての精神的な未熟さを思い知った。それと同時に、自分が今まで英語に対して、翻訳家を目指して学んできたことを否定された気がして、さすがの私も落ち込んだ。「分かりにくい」この言葉がずっしりと重くのしかかってきた。

2時間ほどべっこり凹んだ後、私は気持ちを切り替えた。ここを超えなければ決して翻訳家になどなれない。このくらいのことで諦めるようなら、これから待ち受けているであろう、たくさんの大きな壁を乗り越えてはいけない。こんなことで凹んでいる暇があったら、単語の1つでも覚えた方がよっぽど建設的だ。

やるしかない。やってみせる。

私は決意を新たにした。






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