【転職】



とうとう転職を決断するときがやってきた。今まで「この会社で得られるものはあるのだろうか?」と悩み、「人間関係もお給料もよいし、新生活を始めたばっかりだし・・。」と迷っていたのが嘘のように、スッキリさっぱり決断することができた。2004年7月、私の教育係だった方が産休に入られた。それに伴って、私の翻訳を高校以来英語に触れたことがないという人が添削することになったのだ。彼女には医薬関係の資格がある。そして社員という立場だから、派遣社員である私の英語を添削することになったのだ。どうしても納得できなかった私は、周囲に問題提起し、改善を求めた。ミーティングも開いた。上司と面接も行った。だが結局状況は変わらなかった。
会社に不満を持ったまま辞めるのはイヤだった。だから声を上げた。変えて欲しいと。変らないなら納得の行く説明が欲しかった。だから行動を起こした。納得させてくれと。やるだけのことはやった。だが、何も変らなかった。「何をしようと何も変らないのだ」そう認識した瞬間、私の中で最後の砦となっていた何かが消え去った。「辞めよう」迷うことなくそう思えた。契約満了は9月末。結婚式も9月末。寿退社と思われるだろうか?それならそれでいい。もうこの会社に未練はない。翻訳家を目指すうえで、もうここにいても意味がない。私は静かに決意を固めた。

そうと決まれば実行あるのみ。私は次の働き口を求めて、就職活動を始めた。2年前、カナダから帰国し、就職活動を始めたときは結構辛いこともあった。私の希望は「英語を使った仕事」。しかし、派遣会社には「そうおっしゃる方はたくさんいらっしゃるんですよ」と苦笑いされたり、「経験がないとねぇ」と渋い顔をされたりした。しかし今回は違う。医薬業界での翻訳という経験が私にはできた。翻訳家を目指すというはっきりした目標もできた。「フリーの翻訳家を目指しているから、英語を使った仕事がしたい。翻訳する上でプラスになるよう、医薬業界にこだわらず、他の業界も視野に入れて、探していきたい。たとえ経験のない業種でも、経験の全くないまま飛び込んだ前職では、1年後には翻訳を指導する立場にまでなった。未経験でも私はやっていける。必ず会社の役に立つ人材に育てる。(かなり過大評価&大袈裟な言い方ですが、就職活動のアピール!ということで、お許しください(^^;)。」そんな私の主張は、驚くほどすんなりと受け入れられた。担当者が私の履歴書や話に興味を持ってくれているのを感じた。派遣登録では「例えばこういうお仕事があるのですが、それはどうですか?」と、かなり具体的な話もしてもらえた。2年前とのあまりの違いに、戸惑うほどだった。

色々と葛藤もあった医薬品会社での2年。しかしそこで私が得たものは、英語力や医薬業界での経験だけではなかった。「この会社で働き続ける意味があるのだろうか?」と考える中で、今の自分、昔の自分、将来なりたい自分についても考えるようになっていた。自分は何がしたいのか、そのために今何をすべきなのか、今までの自分は何をしてきたのか、そんなことを深く深く考えた。反省すべきところは反省し、そこからよりよい自分になっていくためにどうすればよいのかを考えた。自分と向き合い、自分への理解を深め、自分の嫌な部分を受け入れられるようになった。例えば面接で「フランス語を専攻されていたのに、なぜ英語なのですか?」と聞かれても、大学でフランス語を専攻したものの、あまり興味を持てず、しっかり勉強しなかったことを素直に言うことができた。そして、そんな自分に激しく後悔したからこそ、もう二度と同じ過ちは繰り返さないよう、会社でこれだけのことをし、今こんなことをしているのだと言えた。「過去の自分は間違ってました」と言えるようになったこと、2年前にはできなかったことだった。自分のいいことも、悪いことも、よどむことなく語れた。

就職活動とは面白いもので、活動して面接などを受けるうち、自分の中であやふやだったことがだんだんはっきりしてきたりもした。その一つが派遣社員として働くか、正社員として働くかという点である。(帰国後は「本にそう書いてあったから派遣社員」というかなり安易な理由でした。(^^;) 今回は、特にどちらにするという風にはせず、両方を視野に入れて活動していた。しかし、私の条件の中で「英語を使う仕事」のほかに「勤務地は翻訳学校に通学できる範囲内であり、週2回、残業ができないというのが許されるところ」が希望としてあった。この3点だけが私の希望だったと言ってよい。正社員を探してみると、「残業をしない日がある」というのはかなり大きなネックになると気づいた。このご時世、「残業時間月20時間程度」と書いてあるところはザラである。実際の時間数はもっと多いのだろうと予想できた。正社員になるために、学校を辞めるべきなのだろうか?そんな風にも考えてみた。だが、自分にとってそれは違う気がした。活動すればする程、今自分が目指す道を進むには、派遣社員として働くのが適していると感じるようになっていた。

9月下旬。年休消化のため、末を待たずに退職。それを機に、派遣会社から仕事の依頼が次々と来るようになった。9月末で退職という人が多かったのかもしれない。毎日のように、色々な会社から電話がかかってきた。とてもありがたいことだった。より自分の希望に合う会社はどこだろう?と条件や内容を吟味した。

そして10月。医療機器メーカーへの派遣を決めた。前職ではファイリングやデータ入力の作業もあったが、今回はほぼ100%、翻訳だけが仕事となる。医療機器という分野もよかった。医薬品からそう遠くなく、しかし全く同じではない。両業界とも同じ薬事法であり、厚生労働省と関係の深い業界であることから、前職での経験を役立てながら、新たなものを切り開いていけるのではないかと思えた。英語に関しても同様に、前職での薬や病気の知識を活かしながら、新たに実験や機械などに関するものも追加していけるのではないかと思えた。

新たな第一歩。後悔しない歩みにしていきたい。






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